2013年5月26日日曜日
ザ・パワー・ステーション / The Power Station
The Power Station(1985年リリース)
①Some Like Hot It ②Murderess ③Lonely Tonight ④Communication ⑤Get It On (Bang A Gong) ⑥Go To Zero ⑦Harvest For The World ⑧Still In Your Heart
デュラン・デュランのギタリストであるアンディ・テイラーの最大の功績のひとつはザ・パワー・ステーションを結成したことなんじゃないかと俺は思っている。イケメン揃いのデュラン・デュランは派手なPVでヒットを飛ばすも、やはりどこかでアイドル・バンドのような印象を拭えなかったけど、ザ・パワー・ステーションのこのアルバムが出たことで、アンディってギターバリバリ弾けるじゃんって思ったし、何よりも中高生だった当時の洋楽ファンにロバート・パーマーという素晴らしいヴォーカリストを教えてくれたわけだし。黒くてハードだけどソウルフルな楽曲はあの時代を過ごした10代の人間にとってはカッコ良すぎた。
デュラン・デュランが3枚目のアルバム『セブン・アンド・ザ・ラグド・タイガー』に伴う世界ツアーを終了させ、グループは小休止状態に入った。その時にアンディ・テイラーは彼が憧れていたロバート・パーマーに声をかけてレコーディングが実現したそうだ。メンバーはデュラン・デュランからジョン・テイラーも参加し、ドラムにはシックのトニー・トンプソン、そしてプロデュースはこれまたシックのバーナード・エドワーズという、いわゆるスーパー・グループだったわけだが、当時の俺はそのメンバーの素晴らしさがまだ分かってなかったのは言うまでもない。そして①の重いドラムの音と、パーマーの "Are You Gonna Do It?" と繰り返される渋いヴォーカルにすぐに打ちのめされた。割とすぐに貸しレコード屋に行ったと記憶している。当時の俺は意識していなかったけど、ドラムの音が重い曲が好きだった。例えば当時だとデフ・レパードの『炎のターゲット』なんかはレコードを買ったのだが、ドラムの音はかなり処理しているような発言を当時読んでいた。それと同じものをこのアルバムからは聴き取れる。ゲートリヴァーヴって言ったけかな、この音処理。
個人的には①はもちろん②の腰にきそうな重さや⑤のT-Rexの有名すぎる曲のカバー、そしてパーマー作の⑥がキラーチューンで、⑤なんてオリジナルよりも良いカバーなんじゃないかって思っている。そして⑦ではアンディのヴォーカルも聴くことができる。アルバムはアメリカのキャッシュボックス誌で最高7位ぐらいだったかな、当時はマドンナの『ライク・ア・ヴァージン』やプリンスの『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』、ティアーズ・フォー・フィアーズの『シャウト』、フィル・コリンズの『ノー・ジャケット・リクワイアード』なんかが上位にいた。ザ・パワー・ステーションとしてはアルバムもヒットしたけど、これがきっかけでロバート・パーマーの後の『リップタイド』が大ヒットしたのだろうと思う。しかしこのグループ、同年のライヴ・エイドではヴォーカルがマイケル・デ・バレスという人に代わってしまった。なんでもパーマーはレコーディングだけの契約でライヴをやるつもりはないという、なんともガッカリな話だった。俺は2枚目のアルバムを期待していたのだけど、ライヴでのそういう話があったからきっとアルバムは出ないのだろうと思っていたからまさか11年後の1996年に2枚目のアルバム"Living In Fear"が出るなんて思いもしなかった。成熟されたザ・パワー・ステーションって感じで、1stのようなインパクトはないし、俺も当時でたCDシングルを輸入盤で早々に買ったもののほとんど聴いていなかった。
じゃあ3枚目は?と言いたいところだけど、これはもう絶対にない。なぜならバーナード・エドワーズは2枚目のアルバムの直前に東京で死去(シックのライヴで来日公演中だった)、そして2003年にはトニー・トンプソンもロバート・パーマーも亡くなってしまい、デュラン・デュランのメンバーしか残っていないからだ。もう2度と再現ができないこのバンド、俺は今でもこのアルバムを聴くことが多いが、リアルタイムで体験できたことを本当に幸せに思う。(h)
【イチオシの曲】Some Like Hot It
俺はPV自体ほとんど見ていないからきっとFMラジオの番組で知ったのだと思う。トニー・トンプソンは確か、この年のライヴ・エイドでレッド・ツェッペリンのドラムを依頼されていたんじゃなかったっけ?それともツェッペリン解散前のジョン・ボーナム死去直後の話だったか、いまいち思い出せない。
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