2012年10月21日日曜日

ザ・スタイル・カウンシル / カフェ・ブリュ


The Stlye Council / Cafe Bleu(1984年リリース)
①Mick's Blessings ②The Whole Point Of No Return ③Me Ship Came In! ④Blue Cafe ⑤The Paris Match ⑥My Ever Changing Moods ⑦Dropping Bombs On The Whitehouse ⑧A Gospel ⑨Strength Of Your Nature ⑩You're The Best Thing ⑪Here's One That Got Away ⑫Headstart For Happiness ⑬Council Meetin'

1984年当時、ポール・ウェラーとミック・タルボットがロードバイクでひたすら走っている"My Ever Changing Moods"のプロモーション・ビデオを何度も見た記憶がある。同じような経験は俺と同年代の人に多いことだろう。当時は新人ミュージシャンなのかと思っていたが、スタイル・カウンシルはザ・ジャムを解散させたポール・ウェラーが次に組んだバンドだった。

20歳の頃、当時付き合いのあった友人の家に行って酒を飲むと、ビートルズの話から始まり、スタイル・カウンシルの話で終わるということが度々あった。ジャムではもはや表現できなくなった音楽をやるためポール・ウェラーが次に始動したのがスタイル・カウンシルで、音楽的に変化はあってもウェラーの主張や怒りはジャム時代となんら変わっていないと、奴は何度も力説してくれた。その頃スタイル・カウンシルは落ち目のころで、初期を「オシャレ」と言って聴いている奴ら(特に女)が気に入らない、だったら『コンフェッション・オブ・ア・ポップ・グループ』も聴けよとくだを巻いていた。そう言われると確かにスタイル・カウンシルを「オシャレ」な音楽としてもてはやす風潮があったし、当時の同じクラスにいた女も「オシャレで最高」とケタケタ笑いながら言ってたことも思い出した。奴と疎遠になってしまってから俺はようやくこの『カフェ・ブリュ』を聴いた。だがしかし2回か3回は聴いたものの、俺にはどうも馴染めないものだったことを知った。どう攻略すればいいのか分からなかったのだ。奴に教えを請いたいと思ったぐらいに。

アナログでのリリース当時は①から⑦までがA面にあたるのだが、このA面が俺には曲者だった。①はタイトルどおりミック・タルボットによるピアノによる小品、③はカリブっぽいジャズで、④はムーディなスロー・ジャズのような曲、⑦はハードバップ風と、4曲がインストゥルメンタルで、②⑤⑥のヴォーカル曲もいまいちつかみ所がなかった。⑤などはエヴリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーンが歌っているからなおさらに。そして致命的なのが⑥だった。中学生の時にPVで見た軽快な曲ではなく、ピアノの弾き語りという、言うなれば別バージョン。B面にあたる⑧以降はラストを除いてはヴォーカル曲ではあったが、前半の幅広すぎる音楽性に戸惑ってしまった俺はこれを克服するのに15年ぐらいかかってしまった。アルバムのジャケットとこれらのジャズやソウルをベースにした音楽性は「クール」というに相応しく、それが当時は「オシャレ」という表現でスタイル・カウンシルはその出だしから日本では好評だった。俺の記憶では2枚目の『アワ・フェイバリット・ショップ』の頃が最もオシャレと言われていたんじゃなかっただろうか?なお、このアルバムの前には"Introducing"というミニ・アルバムが出ているが、これは『カフェ・ブリュ』の前に出ていたシングルなどを集めたもので、イギリス以外の国で出たものなので1stアルバムとはカウントしていない。そう、スタイル・カウンシルはシングルとアルバムは別物というスタイルをとっていて、だから⑥もここではピアノの弾き語りなんだなと今では納得してしまう。

しかしこれじゃまるで俺はこのアルバムをけなしているかのようだが、まったくそうではなくむしろ好きなアルバムである。90年代にもなるとクラブ・ミュージックが台頭しはじめてきて、ジャズやブーガルー、ラテンなどをミックスした音源がいくつも出てきたが、そういうのを通過してきた後に『カフェ・ブリュ』を聴くと、これはそれらの先駆けのように思える。当時のポール・ウェラーの佇まいなんかも後の日本の渋谷系の連中も影響うけてるだろなんて思ったりするし、つまり今こそもっと再評価されてもいいんじゃないかと思っている。今では80年代は嘲笑の対象となることが多いが、お前らしっかり影響されてんだよとも。

ポール・ウェラーの最も尖がっていた時期はスタイル・カウンシルの頃だ。世界中の音楽に目を向け取り入れようとする挑戦もしていたのに単なる「オシャレ」という言葉で片付けてる奴らは何も聴いちゃいない、俺の当時の友人はそんなこともよく言っていた。お互い学校を卒業してからは疎遠になってしまったが、いま奴はどこで何をしているんだろう?今も誰かに同じようなことを話しているなら俺は安心だけどね。(h)

【イチオシの曲】You're The Best Thing
個人的にはこのアルバムで最も安心して聴ける曲。というのも、スタイル・カウンシルのイメージが俺の中ではこの曲に集約されているから。これと⑥のシングル・バージョンがイメージを決めてしまったからアルバムで大いに戸惑ったに違いない。

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