2012年10月7日日曜日

ブロンディ / 妖女ブロンディ


Blondie(1976年リリース)
①X Offender ②Little Girl Lies ③In The Flesh ④Look Good In Blue ⑤In The Sun ⑥A Shark in Jets Clothing ⑦Man Overboard ⑧Rip Her To Shreads ⑨Rifle Range ⑩Kung Fu Girls ⑪The Attack Of The Giant Ants

まだ俺がハタチにもなっていなかった25年ぐらい前、テレビの深夜番組で女性のアマチュアバンドのことを取り上げた番組をたまたま見ていて彼女たちの練習風景が流れた。そこで演っていた曲がブロンディの「汚れた天使(⑧)」だったのだが、それを見て俺は嬉しくなった。当時、世間では(最近再結成もした)プリンセス某というグループが女性による「ロックバンド」とかもてはやされていたことに嫌悪感を抱いていたのと、一方でアマチュアのバンドがブロンディのどちらかというとダーティなイメージのある曲を演っていたという事実にほくそ笑んだのだ。ちなみにそのバンドは当時俺よりも年上の人たちというか、30代の人たちだった。そりゃブロンディを演るよなと納得した。

ブロンディはニューヨーク・パンクのシーンに登場したが、テレヴィジョンやパティ・スミスのようなアート的な佇まいも無ければ、ラモーンズやリチャード・ヘルのようなパンクらしさも無い。どちらかというとポップなイメージが強く、それが功を奏して彼らニューヨーク勢の中で最も商業的に成功したグループとなった。「ハート・オブ・グラス」や「コール・ミー」などのヒット曲からはディスコ・ミュージックの印象を与えるが、彼らの音楽の下地となっているのは60年代のガールズ・ポップやサーフ・ミュージックだと思う。彼らの初のシングルとしてリリースされた①を始めとする11曲はどれを聴いても60年代ポップスへのオマージュのように聴こえるし、キーボードは時折ザ・ドアーズを思わせる部分もある。そんな中で③のようなうっとりする曲はこのアルバムだけ見るとある意味異色かもしれない。何せ後半には「戦え、カンフー・ガールズ」と邦題のついた⑩や「恐怖のアリ軍団」という邦題の⑪なんかも含まれているから。

さて、ブロンディといったらやはり紅一点のデボラ・ハリーのことを書かなくてはならないだろう。70年代後半のセックス・シンボル的存在にまでなった彼女はブロンディでデビューした時にはすでに31歳だった。俺もここ10年ぐらいの間に知ったのだけど、彼女はブロンディ以前にも音楽活動をしていて、60年代後半にはザ・ウィンド・イン・ザ・ウィロウズというグループに参加していてアルバムも出していたそうだ。それだからかだろうか、俺はずっとブロンディでの彼女はガールズ・バンドのようなキャピキャピしたイメージがまったく無く、肝が据わっているような印象を受けていた。ザ・ウィンド・イン・ザ・ウィロウズというバンドは商業的な成功は無く、彼女はウェイトレスのバイトをしながらひたすら機会をうかがっていたそうで、これはあくまでもイメージだが、ブロンディを結成した時には何でもやるわよ!という勢いがあったんじゃないかなと、今はこのアルバムを聴くとその種の気負いを感じることがある。まあ考え過ぎかもしれないけど。

余談だが、最近車のCMで「ハート・オブ・グラス」が使われていて、俺も何気なく自分のブログ「トーキョーオンガクサイト」でそのことを書いたのだけど、その記事へのアクセスがものすごく多くてビックリしている。しかしそれはすなわち、ブロンディの楽曲が今も十分アピールできるものであって、多くの人を惹きつける魅力に溢れているものなんだろうと思う。そういえば俺だって今でも昔と同じような気持ちで彼らの曲を聴いているし、古臭いと思ったことがないからね。

そんな中でもこの1st『妖女ブロンディ』は60'sポップスと現代を繋ぐパイプ的な1枚でもあると勝手に思っている。俺は今はアナログしか持っていないから、最近はちゃんと聴いていないんだけどね、実は・・・。(h)

【イチオシの曲】Rip Her To Shreds
ガールズ・バンドには是非カバーしてほしい曲。この下品さが出せれば最高だよって思う。昔、外国人の先生から、親しい仲間を呼ぶ時にいちいち名前を呼ばずに「プスー(PSSSSS!)」と空気を吐き出すようにして音を立てるって聞いたことがあって、この曲の冒頭の「ヘイ!プスプスッ!ヒーシカムズナーウ」の「プスプス」ってそういうことかと思った時にちょっとした世界観が広がったと思った19歳の頃を思い出してしまうんだよなw

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