2012年7月15日日曜日

フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド / プレジャードーム


Frankie Goes To Hollywood / Welcome To The Pleasuredome(1984年リリース)
①The World Is My Oyster ②Welcome To The Pleasuredome ③Relax ④War(...and Hide) ⑤Two Tribes(For The Victims of Ravishment) including The Last Voice ⑥Born To Run ⑦Happy Hi! ⑧Wish (The Lads Were Here) including The Ballad of 32 ⑨Krisco Kisses ⑩Black Night White Light ⑪The Only Star In Heaven ⑫The Power Of Love ⑬Bang
(※現行CDの曲順)

90年代に「2枚組のデビュー・アルバムをリリースして世界中でNo.1にして解散する」なんて大口をたたいてデビューしてきたバンドがいた。そのバンドはセンセーショナルな話題もあったがアルバムが1位になることはなかった。80年代には同じように過激な話題を振りまいて、2枚組のデビュー・アルバムを1位に送り込んだグループがいた。それがフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドである。

フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド(以下FGTH)は1983年に「リラックス」でデビューした。この曲は日本でもテレビ番組やCMで流れていたことがあるから知っている人も多いかもしれないが、当時は過激な性描写がもとで本国イギリスでは放送禁止となった。そして2枚目のシングル「トゥー・トライブス」も米ソの核戦争をモチーフにした内容だったために放送禁止とかなりのセンセーショナルな登場だった。しかしその話題性が両曲をイギリスのチャートで1位に押し上げ、続く「パワー・オブ・ラブ」も1位となった。さらにはメンバーはゲイを公言し、当時新鋭だったZTTレコードの戦略もあって世界中で注目を浴びる存在となった。そんな彼らが満を持して発表したのが『プレジャードーム』で、イギリス国内では予約だけで100万枚だったかで「ビートルズの人気を超えた」なんて言われたりもしていた。当然このアルバムも1位となりその勢いは止まらなかった。

ZTTレコード特有のサンプリングサウンドやオーケストラルヒットなどの音作りは1980年代のポップ・ミュージックのシーンに変化を与えたことも見逃せない。ZTTレコードは元バグルズ、元イエスのトレヴァー・ホーンらが設立したレーベルで、その初期こそは実験的なものが多かったがABCの「ルック・オブ・ラヴ」のヒットを始めとして、世界中に注目されるレーベルとなった。ただプロデューサー陣が完璧主義者だったため、バンドの演奏をこっそり録音しなおして差し替えるなんてこともしていたらしく、FGTHのアルバムもそれは例外ではなかったようだ。そのためメンバーはほとんど演奏していないとかライヴもテープを流しているだけなどと言われるようになり、バンドの人気も徐々に低下していった。1986年に2ndアルバム『リヴァプール』をリリースしたものの、デビュー時のキワモノ的な部分がすっかりなくなりグループは自然消滅していった。

当時は情報が雑誌からというのがほとんどだったから、そこで書かれていた話題を読むたびにデビュー・アルバムへの期待が大きくなり、2枚組という情報を聞いた時はそれだけで衝撃的だった。アナログレコードのABCD面をFGTH面と表記してあって、F面は13分におよぶタイトル曲がメインとなっていて圧巻だった。「リラックス」や「トゥー・トライブス」はG面に収録されていた。T面にはカバー曲が収録されていたが、今思うとなぜカバー曲なんかを入れたのかその意図は分からない。H面には「パワー・オブ・ラヴ」とその他のオリジナル曲で実は俺はこの面が好きだ。

もしFGTHがその後も活動を続けていたら、デビュー時のインパクトももっと語られていたかもしれいないが、今となっては「80年代」というキーワードの中でだけ語られるもので、ポップ・ミュージックの歴史に残るのは先のシングルとFGTHという名前だけだろう。いくらあの時は凄かったと言ってみても、それが分かるのは俺と同じくリアルタイムで体験した者だけであろうと思うと、不幸なアルバムではある。(h)

【イチオシの曲】Relax
やはりこの曲は外せないと思う。性描写が過激と言われて放送禁止になっていたけど、歌詞の意味が伝わりにくい日本では「リラックス」という単語のみで清涼飲料のCMに使われたりしていた。この曲はシングルだけでなく、いろいろなバリエーションでのリミックスがあって、その手の走りでもあった。ちなみにこの曲のドラムはレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム!そう、サンプリングされているってわけ。当時はそれも驚きだった(俺は後で知ったけど)。

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