2012年7月22日日曜日

ザ・ポリス / アウトランドス・ダムール


The Police / Outlandos d'Amour (1978年リリース)
①Next To You ②So Lonely ③Roxanne ④Hole In My Life ⑤Peanuts ⑥Can't Stand Losing You ⑦Truth Hits Everybody ⑧Born In The 50's ⑨Be My Girl - Sally ⑩Masoko Tanga

中学生の時に「見つめていたい(Every Breath You Take)」がヒットしたことでポリスの『シンクロニシティ』を買った。その後過去のアルバムや楽曲に遡っていったのだが、この1stアルバムが『シンクロニシティ』とはかけ離れたものだったので、まだ若かった俺は少々戸惑った記憶がある。まだパンクという概念も知らなかった頃の話だ。

ポリスというバンドはてっきりスティングのバンドなのかと思ったが、ドラマーのスチュワート・コープランドがスティングを誘う形で結成されたらしい。スティングは元々ジャズ・バンドで活動していて、コープランドはプログレのカーヴド・エアに所属、そして後に加入するアンディ・サマーズにいたっては彼らよりも10歳ぐらい年上でアニマルズに所属していたという。パンクの形態を取り入れたのはコープランドの発想で、パンクが登場した当初はキャリアのあるミュージシャンには否定されていたような印象があるのだけど、それを思うと彼らはパンクを利用してうまいこと流れに乗っかったんだなと思う。

彼らの1977年のデビュー・シングル「フォール・アウト」は典型的なパンク・ナンバーで、ギターは前任のヘンリー・パドゥバーニが参加している。しかしこの曲は翌年の1978年にリリースされた『アウトランドス・ダムール』には収録されていない。もし収録されていたら、アルバムの印象もかなり違ったものになったかもしれない。アルバムの冒頭①や⑦はパンクと呼ぶに相応しい曲ではあるが、全体的には良く練られたポップ/ロックのアルバムという感じが強い。②ではレゲエ風のリズムが加わっていて、⑩もアフロビート的なリズムのジャムセッションで、言葉も何語なのかがわからない。そうかと思うと⑧のようなポップな曲もあるし、⑨にいたってはナレーションも聴ける。こうして見るとかなり多彩なアルバムではあるが、これは恐らくコープランドのリズムの豊富さにあると思う。だけど一聴してパンクと感じるのはスティングの荒々しいヴォーカルがやはり大きいのかなと。なお、彼らの代表曲となる③は売春を、⑥は自殺を助長させるとかでリリース当時はイギリスでは放送禁止となったそうだ。

あえて言うならこのアルバムはジャズやプログレをやっていたミュージシャンが当時のブームに便乗してうまいことやった「似非パンク」。しかしその結果ポリスは世界的成功をおさめることが出来たわけだから、これはまさしく戦略勝ち。今思うとアルバム5枚で活動停止となってしまったのは、もともと明確な音楽性や方向が無かったのかもしれない。そうは言っても彼らのアルバムには駄作は無いし、このアルバムも70年代終わりのパンク~ニューウェイヴ・シーンに燦然と輝く名盤であることには変わりない。(h)

【イチオシの曲】Next To You
冒頭のドラムから入るイントロだけでもカッコいいのだけど、そこからすぐに入るスティングの力んだヴォーカルも、今の彼の作風からすると意外性があって良い。アルバムの1曲目はそのアルバムのカラーを決めると思っているので、そういう点ではこの曲は時代も考えると1曲目に持ってきて当然だし、すごくいい見本だと思う。


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