2013年3月17日日曜日
デヴィッド・ボウイ / David Bowie
David Bowie(1967年リリース)
①Uncle Arthur ②Sell Me A Coat ③Rubber Band ④Love You Till Tuesday ⑤There Is A Happy Land ⑥We Are Hungry Men ⑦When I Live My Dream ⑧Little Bombardier ⑨Silly Boy Blue ⑩Come And Buy My Toys ⑪Join The Gang ⑫She's Got Medals ⑬Maid Of Bond Street ⑭Please Mr. Gravedigger
1990年にアメリカのライコディスクがデヴィッド・ボウイのアルバムの再発を始めた。俺もそれがきっかけで聴くようになったのだが、その時はてっきり『スペース・オディティ』が1stアルバムなのかと思っていた。「RCA時代のアルバム」という前置きがあったこともあるが、ほどなくして特集されたレコード・コレクターズ誌で実はその前にもう1枚あるんだよってのを知ったものの、ずっと軽視していてなかなか聴くことがなかった。そもそも『スペース・オディティ』が再出発となった1枚と言われてたことから、じゃあそれが1枚目でいいじゃんなんて思っていたものだからなおさら手を出さずいたのだ。
デヴィッド・ボウイは1960年代に本名のデイヴィー・ジョーンズの名前でグループを結成して音楽活動を始めたもののヒットに恵まれず、ソロになる際にデヴィッド・ボウイと改名し、デッカレコード傘下のレーベル「デラム」からデビューをした。最初にシングル2枚をリリースし、その後にリリースされたのがこのデビュー・アルバム『デヴィッド・ボウイ』で、シングルカットとして④もリリースされている。1967年という時期だけに、当時のブリティッシュ・ポップ色の濃い内容となっている。しかしこれがデヴィッド・ボウイの原点!と言っていいのかどうか、俺は正直迷っていた。しつこいようだが『スペース・オディティ』こそ原点と思っていたからだ。
このアルバムはほとんど話題になることが無く、デラムからも解雇されてしまうという憂き目に遭っているのだが、その一方でボウイはリンゼイ・ケンプのパントマイムに衝撃を受けて弟子入りをしたり、仏教にのめりこんだりしていくなかで徐々に自己のアイデンティティを確立し、RCAに籍を置くようになってからのフォーク色の強い初期、そしてグラム・ロック期へとなだれ込み一気に立ち位置を確立していく。やはりこの時期以降のインパクトが大きすぎて、デラム期のこのアルバムへの焦点はなかなか当たりにくいというのがある。唯一このアルバムとシンクロするのが60年代のヤードバーズやザ・フー、キンクスなどをカバーした1973年の『ピン・ナップス』ぐらいなんじゃないだろうか。しかしこのデビュー・アルバムに聴きどころがないのかと言えばそんなことはなく、時代を反映したサイケデリックな部分や演劇的な要素やストリングスを散りばめた楽曲たちはそれなりに個性があって面白い。
実はボウイは2001年ごろに、デビュー前の「埋もれた曲」をセルフカバーした"Toy"というアルバムをリリースしようとしていたが、レコード会社とすったもんだしてお蔵入りしている。その中には⑨も含まれていて、もしこのアルバムが正式にリリースされていたら彼のデビュー前後のことももっと語られていたのではないかと思うと残念である。結局は一部の愛好家がリークされたアルバムを聴いているに過ぎない(ごめん、俺も聴いているけど)。それはさておき、ボウイ自身がデビュー前の曲を蘇らせようとしていたのは事実だし、そう考えるとソロ・デビュー前からこのアルバムまでは原点というよりは原石なんじゃないかと思う。RCA時代のボウイの楽曲は発表された時点ですでに完成されていたのに対し、このアルバムの曲はアレンジのしようによってはもっと良くなるんじゃないかとかつい考えてしまう。
だけど俺はこのアルバムは「デヴィッド・ボウイ」というブランドというよりは、60年代のブリティッシュ・ポップのアルバムとして聴いているほうが断然楽しめるという結論に達しているので、RCA時代とどうこうとか、特にそんな比較はしていないというのが本音。散々そんなことを書いておいて最後に何を言ってるのかって感じだけど。(h)
【イチオシの曲】Love You Till Tuesday
邦題「愛は火曜日まで」というそのまんまのタイトル。
いかにも60年代って感じのこの映像は、後のドギツイ化粧をしたグラム・ロック時代のボウイと同じ人物とは思えない・・・。
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