2012年12月16日日曜日

ソニック・ユース / Sonic Youth


Sonic Youth(1982年リリース)
①The Burning Spear ②I Dreamed I Dream ③She Is Not Alone ④I Don't Want To Push It ⑤The Good And The Bad
以下CD追加曲 ⑥Hard Work ⑦Where The Red Fern Grows ⑧The Burning Spear ⑨Cosmopolitan Girl ⑩Loud And Soft ⑪Destroyer ⑫She Is Not Alone ⑬Where The Red Fern Grows

「いちばん好きなバンド」と聞かれれば俺は大抵ソニック・ユースと答えてきた。1988年にインディー時代の大傑作『デイドリーム・ネイション』を訳もわからず買って聴いて以来、常にリアルタイムで聴いてきた数少ないバンドだからだ。1990年にはメジャーレーベルのゲフィン・レコードへ移籍し、それを機に俺も彼らのレコードを集めるようになったのだけど、このデビュー・アルバムを聴くことができたのは再発された2006年になってからだった。聴き始めのころには何度かレコード屋でこのアルバムを手に取っているが、その時には買わなかったのだ。そのために聴けるようになったのが10年以上も待つことになるとは・・・。

ソニック・ユースは1981年にサーストン・ムーアとキム・ゴードンによってに結成された。これは何でも同年の6月にニューヨークで行われたポスト・ノー・ウェイヴ系のアーチストたちによるイベント「Noise Fest」に出演するための即席バンドらしく、同じイベントに別のバンドで出演していたリー・ラナルドが加入していなかったら果たしてグループはその後も存続していたのか謎である。このイベントの音源を聴いてみると曲としての体裁はあまりなく、即興的なノイズパフォーマンスに終始しているが、7月ぐらいからは徐々に固定の曲が出来ていたようで、このアルバムは12月に録音をしている。そして当時のポスト・ノー・ウェイヴの中心的な存在でもあったグレン・ブランカの興したNeutral というレーベルからリリースされたのがこの"Sonic Youth"だ。このアルバムは後に彼らが所属するSSTレコードから再発されたり、イギリスでの配給先であるBlast First からも再リリースされたことがある。俺が店頭で見たのはきっとそのどちらかのレーベルからのものだっただろう。その時には買わずに後に中古盤で見かけたときは9800円という値段がついていた・・・。

2006年になってようやくゲフィンから再発された際には、1981年9月のライヴ音源がボーナストラックとして追加された。それはすなわちこのアルバムを録音するよりも前の時期のライヴであって、このアルバムに至る行程も垣間見える。まず⑥は④のプロトタイプで、⑦は②のインストゥルメンタル・バージョンとなっている。⑩は⑤の後半部分だし、しかもこれらのライヴは断片的にかつて彼らがカセットからリリースした"Sonic Death"に収録されているものと同じだった。これらのライヴ音源も踏まえつつこのアルバムを聴くと、すでに軸となる音が出来上がっていて、それは後年も変わっていないというのがよく分かる。ただ、彼らの特徴でもある変則チューニングがこのアルバムからは感じられない気がするのだがどうなんだろう?俺はあまり楽器のことになると分からなくてなんとも言えないが。だから2枚目の"Confusion is Sex"を初めて聴いた時の難解な感じが、このアルバムからは感じられずむしろ聴きやすい。しかしどうせならボーナストラックとしてこのアルバムのカセットテープ盤のB面に入っていた①から⑤までの曲を逆転再生したトラックを入れて欲しかった。曲名まで"raepS gninruB ehT"みたいな表記だったみたい(もちろん文字も逆)。

ところでソニック・ユースのディスコグラフィを作ろうと思うと、これほど手間のかかるバンドはいないのではないだろうかと思う。オフィシャル・ブートレグを数多くリリースし、当時のインディー・レーベルのコンピレーションに曲を提供したり、それをレーベルからリリースしたり、個人でリリースしたりと、80年代の彼らはかなり好きにやってきたと思う。ゲフィン・レコードに移籍してからもその自由を得ることができたがそれまでほど活発ではなく、せいぜいSYRシリーズぐらい。だが、そういう自由なやり方があるということを教えてくれたのがソニック・ユースであり、多くのミュージシャンにも影響を与えているのは間違いない。サーストンとキムの夫婦が離婚してしまったことで今はバンドとしての活動が止まってしまったが、それでも解散などと宣言しないで、かつてのように変なレコードを量産してほしいと思ってしまう。(h)

【イチオシの曲】I Dreamed I Dream
まるでテレヴィジョンの"The Dream's Dream"へのオマージュのようなタイトルだが、もともとインストゥルメンタルだった曲に歌詞というよりは言葉をのっけただけのこの曲は初期の中でもかなりクオリティが高いと思う。ゲフィン・レコードからインディ時代のアルバムのベスト盤が出た時に、まだCD化されていなかったこのアルバムから唯一収録されたことからもその評価が窺がえる。

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