2013年8月11日日曜日
マーズ・ヴォルタ / ディラウズド・イン・ザ・コーマトリアム
The Mars Volta / De-Loused in the Comatorium(2003年リリース)
①Son et Lumière ②Inertiatic ESP ③Roulette Dares (The Haunt of) ④Tira Me a las Arañas ⑤Drunkship of Lanterns ⑥Eriatarka ⑦Cicatriz ESP ⑧This Apparatus Must Be Unearthed ⑨Televators ⑩Take the Veil Cerpin Taxt
【アルバムについて】
オルタナ、ポストハードコア的なアット・ザ・ドライヴイン(ATDI)のVo.とG.が立ち上げた、より実験的表現を求めるバンド、マーズ・ヴォルタ。プログレ、ハードロック、ジャズ、フュージョンなど、本人たちの好き勝手にさまざまな要素を詰め込み過ぎて、それぞれのジャンルのファンからは見向きもされなくなっている嫌いもあるのではないだろうか。前身のATDIにはなかった、俺の琴線に触れるメロディがこの作品には溢れるように存在しており、7分を超える③や⑤を一気に聴かせてしまう独特の勢い、雰囲気がある。ATDIを含めライヴバンドであり、解散してその楽曲をライヴで体験できなくなってしまったことは本当に残念。
【オススメ度】★★★★☆
★5つと言いたいところだが、そのパフォーマンスを生で拝めなくなってしまったので★をひとつ減らす。ATDIと同じく一時的でもいいから再結成して欲しい。(k)
【hiroumiの感想】
ああ、このジャケットのバンドか!当時、このジャケットを見て「センス悪っ!」と思ってそれっきりだったなぁ。2008年の"Bedlam in Goliath"は少しだけ聴いていいねと思っていたけど、まさか同じバンドのアルバムだったとは。そう、このアルバムのジャケットだけで判断したものだから、これがマーズ・ヴォルタのアルバムだったとは、ここで初めて知った。でも"Bedlam in Goliath"は若干プログレっぽさがあったような気がするから、ちょっと聴き比べてみないと俺はなんとも言えない。下のYouTubeに貼られた②は良い。
2013年5月5日日曜日
ザ・ゴシップ / ザッツ・ノット・ホワット・アイ・ヒアード
The Gossip / That's Not What I Heard(2001年リリース)
①Swing Low ②Got All This Waiting ③Bones ④Sweet Baby ⑤Tuff Luv ⑥Got Body If You Want It ⑦Where the Girls Are ⑧Bring it On ⑨Heartbeats ⑩Catfight ⑪Jailbreak ⑫Southern Comfort ⑬And You Know... ⑭Hott Date
このレビューを書こうと思って、いきなり躓いたのがタイトルの日本語表記。この作品は日本盤がリリースされていないため、タイトルのカタカナ表記あるいは邦題がなく、'Heard'をどうカタカナ表記するか悩んだ。「ハード」の方が本来の発音に近いカタカナ表記かと思うが、これだと'Hard'をイメージしてしまいがちと思い、ここでは「ヒアード」とさせてもらった。また、蛇足ながらバンド名が'The Gossip'から'The'が取れて現在では'Gossip'を名乗っている点も書き添えておく。
俺とゴシップが出会ったのは、まだ20世紀だった2000年のHMV横浜VIVRE。今はないこの店舗で当時、店内のエスカレーター横にシングルCDのコーナーが設置されていたと記憶している。そこで目にした黒地に白のラインとピンクで'the GOSSiP'と書かれたD.I.Y.感あふれる雰囲気のジャケット。そこに印刷されたKレコードのロゴを見て購入を即決した。だがその中身を聴いてみると、カレージ直球なサウンド自体は大変好みであったものの、楽曲自体が俺の琴線に触れるようなものではなかった。更に、キル・ロック・スターズからリリースされたこの1stアルバムを中古で入手するも印象は変わらず。ここで一度ゴシップに対する興味を完全に失う。
数年後、スリーター・キニーやクアージ目当てで買った"BURN TO SHINE"の第3弾であるポートランド編にトリで出演していたゴシップを見て、ゴシップに対する印象が180度好転する。この時初めて動くメンバーの姿をキチンと確認したのだが、ぽっちゃりレヴェルでは済ませられない女性シンガーの貫禄、ファッションセンスとそのアクション、小汚いおっさんギタリスト(ここではベース)の佇まいのダサさ、この2人の醸し出す雰囲気にメチャメチャ惹かれて虜になった。そしてもうひとり、映像を繰り返し見てようやく気づいた男前ドラマーのおっぱいの存在。その3人の織り成す絶妙なバランスが堪らなかった。この頃のゴシップは3rdアルバム『スタンディング・イン・ザ・ウェイ・オブ・コントロール』がリリースされ英国で火が付き、ベス・ディットーがポップアイコンとして世間一般の注目を集めていた。ゴシップは俺の知らぬ間に成功を収めていたのだ。
この1stアルバムのガレージなサウンドは、ベスの歌にブレイス・ペインが奏でるシンプルなリフが絡みつくことで構成されており、ベースレスで抜けがいい。もっと言えばベスの声、ブレイスの演奏、その2つがあればこの頃のゴシップは成立していたと思う。ベスの歌い方はロックやパンクっていうよりもゴスペルとかの方が近いと思うが、この1stで聴けるサウンドに対してはガレージって言葉が本当によく似合う。ベースレスでガレージっていうとホワイト・ストライプスの名前が出てくるけど、ジャック・ホワイトのギタープレイと比較してブレイスのギターはカッコいいことを一切やろうとしてない。直球一本勝負なのが味にもなっていて好感が持てるし、逆に言えばそれしかできなかったのかもしれない。2007年の来日公演でブレイスはギターぶら下げたままシンセサイザーも演奏していたけど、ここでも決してカッコよくはない古臭いままのニューウェーヴ感が堪らなかった。この2つの個性は後に大きく化けるダイヤの原石たるものだったわけだが、見た目も含め大きくビルドアップしながらも現在までやっていること、やろうとしていることにブレがないのがいい。ガレージというよりはクラブ受けするダンスロック的な位置付けになったことと、ベスの服装やお化粧にお金を掛けられるようになったことは大きな違いかもしれないけれども。
ちなみに前述の"BURN TO SHINE"で演奏している男前な現ドラマーのハンナ・ブライリーは3rdアルバム『スタンディング~』からの参加で、この1stおよび2ndアルバム『ムーヴメント』では、後に助産師を目指して脱退するキャシー・メンドーサが叩いている。ハンナもベスと同じくLGBTのようで、4thアルバム『ミュージック・フォー・メン』のジャケットで見られるキリッっとした彼女の佇まいが本当に男前だ。その一方、2007年の来日時には髪の毛を伸ばして下ろしており、一目見て恋に落ちるほどスゲー好みの女の子だった。そんな彼女の双子の兄弟は、ザ・ブラッド・ブラザーズのツインヴォーカルの片割れらしい。以上、どうでもいい情報。
3rdアルバム『スタンディング~』およびそれに続く2枚のアルバムでは、シンセサイザーの多用などによりサウンドが華やかでダンサブルになりつつもその立ち位置といった基本路線に大きな変更はないのではないかと思う。そのルックスや行動、言動は極めてキワモノであるにも関わらず多くの人たちに受け入れられている点は注目に値する。グランジ等のオルタナティヴな音楽がメインストリームと化したり、ライオット・ガールやフェミニズム運動が注目された90年代初頭を連想させる部分もあり、LGBTかつ肥満体で真のオルタナティヴな存在であるベスが世間に受け入れられる様は痛快だ。また、フジロックフェスティバルへの出演を含む来日公演では、ニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」やビキニ・キルの「レベル・ガール」をカバーするなど、自身のルーツを明らかにする音楽ファンへのサーヴィスも興味深い。
5thアルバム『ア・ジョイフル・ノイズ』の日本盤帯に書かれた「次世代ダンスロックの決定版!」というダサカッコ悪いコピーに負けない今後の活躍を祈りつつこの文章を締める。(k)
2013年4月28日日曜日
ザ・デッド・ウェザー / 狂おしき薫り
The Dead Weather / Horehound(2009年リリース)
①60 Feet Tall ②Hang You From The Heavens ③I Cut Like A Buffalo ④So Far From Your Weapon ⑤Treat Me Like Your Mother ⑥Rocking Horse ⑦New Pony ⑧Bone House ⑨3 Birds ⑩No Hassle Night ⑪Will There Be Enough Water?
元ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイト、ザ・キルズのアリソン・モシャート、クイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジのディーン・ファーティタ、そしてザ・グリーンホーンズのジャック・ローレンスという豪華なメンツ・・・ごめん、俺はこれらの人たちが所属するバンドの曲を聴いたことがないんだ(笑)。ちゃんと今の音楽シーンを追っている人からすればある意味スーパーグループなのかもしれないが、俺はジャック・ホワイトしか知らないし、そのジャック・ホワイトだってようやく今頃になって興味をもったという程度なんだ。だから取り掛かりとして、そこから書かなくてはならいだろう。
ジャック・ホワイトに興味を持ったのは去年のこと。『ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター』という映画のDVDを見たことに始まる。この映画はタイトルにある通り、U2のジ・エッジといまさら説明不要のジミー・ペイジ、そしてジャックの3人がそれぞれのギタースタイルをどう築きあげていったかとか、各々のバンドの話とかジャム・セッションを行っているものなのだが、俺は最初はジミー・ペイジを目当てに見ていた。だけどジャック・ホワイトの音楽へのこだわり、なんて言ってたのか今は思い出せないけど、それを見ていて若いミュージシャンなのに考え方がアナログで良いなと思った。そこからずっと心の片隅に残るようになっていた。その後彼のソロ・アルバム"Blunderbuss"の評判がいいのでこれも気になりながらもずっと未聴で、そんな中ふと、彼が以前組んでいたザ・ラカンターズのアルバムを聴く機会を得た。これが非常に良く、そこから俺はウィキペディアでジャック・ホワイトのことを読んだりして、その中でこのデッド・ウェザーの事を知ったのだった。だからこのアルバムを聴いたのはつい最近の事だと正直に告白しておく。
ザ・デッド・ウェザーを結成してこのアルバムを出した2009年というのはホワイト・ストライプスもまだ同時進行でやっていたってことになる。何せこのアルバムの日本盤についてAmazonを見ると「『ホワイト・ストライプスの新作までの繋ぎのプロジェクトだしね』なんて侮るなかれ」などと書かれている。ここでさらに白状すると、俺はホワイト・ストライプスも聴いていない。昔一度聴いてみようとしたが、何曲か聴いて好みじゃないと判断してしまったんだ。だからザ・デッド・ウェザーの立ち位置やこのアルバムが出た時の周りの反応なんてものもまったくわからないし、当時はきっと何の興味もなかったと思う。それが今になってなんだよって自分に突っ込みを入れたいぐらいだ。
さて、このアルバム、最近では珍しく邦題なんてついているわけだけど、結論を言ってしまうと俺好みのオドロオドロしたロックである。ガレージ・パンクやブルースの影響を残しつつ、ジャケットの貞子よろしく暗黒系な雰囲気を醸し出している。翌年リリースした"Sea Of Cowards"を聴いてしまうとこのアルバムはまだ手探り状態という感じもしなくないがそんなことはどうでもいい。UKロックがニュー・ウェイヴ以降を引きずっているような印象のバンドばかりというのと比べると、やはりアメリカのバンドのほうが俺には合っているなと思ってしまう。幅が広いんだよな。
なお、ジャック・ホワイト関連で『ゲット・ラウド』およびザ・ラカンターズについて教えてくれたSさんへこの場を借りて感謝!(h)
【イチオシの曲】Hang You From The Heavens
最初にシングルとしてリリースされた曲がこれのようだ。
2013年3月24日日曜日
アヴリル・ラヴィーン / レット・ゴー
Avril Lavigne / Let Go(2002年リリース)
①Losing Grip ②Complicated ③Sk8er Boi ④I'm with You ⑤Mobile ⑥Unwanted ⑦Tomorrow ⑧Anything But Ordinary ⑨Things I'll Never Say ⑩My World ⑪Nobody's Fool ⑫Too Much to Ask ⑬Naked
現代のロックスターと言えば、誰のことを想像するだろうか。スーパースターでもギターヒーローでもなく、ロックスター。
ちょっと考えてみたけれども、適切な人が思い浮かばない。グルーピーをとっかえひっかえとか、ホテルの窓からテレビを投げ捨てるとか、薬漬けとリハビリ施設を往復するとか、27歳で死んでしまうとかをするような人を思い浮かべてみたが、どうもしっくり来ない。そもそもセックス・ドラッグ・ロックンロールなんていう感性が古い。
ロックの範疇からは外れるが、エミネム、あるいはジェイ・Zとかショーン・コムズとかはどうだろうか。あるいはレディ・ガガ。彼女はなかなかそれに近い存在ではないだろうか。あのような奇抜なルックスはほとんど宇宙人だ。でも、これらの人たちはギターをかき鳴らすわけでも、ギターを叩き壊すわけでもないわけで、スターやヒーロー(ヒロイン)というよりはセレブリティという方がしっくりくるかも。そもそもロック=エレキギターなんていう感性が古い。
もっと言えばロックスターという言葉を耳にして、ゲーム会社だったり、裏原宿系(?)のブランドのことを思い浮かべる人もいるかも知れない。憧れの存在としてのロックスターが不在しているというよりも、ロックスターという言葉を持ち出す感性が古い。時代遅れなのかもしれない。
アヴリル・ラヴィーンの歌う③('Sk8tr Boi'という綴りはテキストメッセージ文化に馴染んでいるデジタルネイティヴ世代を感じさせる)は、過去に振ってしまったスケボー少年が、気付けばスーパースターになっていたという女の子視点のストーリーが歌詞となっている。この曲は1stアルバム『レット・ゴー』からの2ndシングルで、フジテレビ系の朝の情報番組「めざましテレビ」でこのPVがちょこっと紹介されたりしたと記憶している。それにしても21世紀だというのに、パンク=スケーターとか、MTVでロックしてるとかなんか感性が古い。おいおい、ホントにこれ、十代の女の子が書いた歌詞なの?って思ったけど、制作にはプロデューサー集団ザ・マトリックスが絡んでるので正確なところはわからない。若い子が共感できる歌詞なのかホントに疑問だけれども、そのような価値観は世界各地ではまだ健在なのかもしれないし、曲がブレイクすることと歌詞の内容に相関関係はないのかもしれない。
そんなわけでザ・マトリックスというしっかりとした後見人が居るためか、そのクリーンで無駄に骨太なサウンドがとても心地良い。どこまで彼女の手によるものかはわからないが、売れ線気味の楽曲は全てクオリティが高い一方、良くも悪くも金太郎飴状態の曲を繰り返し聴くのは少々食傷気味だ。などと否定的な表現を使ってしまったがこれは褒め言葉で、彼女の恵まれたルックスを含め、この万人受けする要素がこれだけ揃っていることは本当に素晴らしいと思う。日本でももうちょっと売れてもよかったのではないだろうか。レコード会社のマーケティングに問題があったのではないかとすら考えてしまう。感性の古い俺になんて言われたくないと思うけど。
ザ・マトリックスは、コーンやリズ・フェアなどとの仕事が興味深い一方、バステッドやスカイ・スウィートナム、マクフライ、リリックスなどにも曲の提供やプロデュースをしているようで、アイドルに近いロックやポップスを専門としているようだ。今の時代(と言ってもこの作品がリリースされたのはもう10年以上前だが)、レコードをスクラッチさせる効果音とか部分的にラップを入れるとか当たり前になっているようで、今作でも聴けるこれらの装飾は個人的には余計にしか思えず好みじゃない。アヴリルにはいつか、売れ線プロデューサーの協力なしに荒削りなバンドサウンドのみで作った曲を聴かせて欲しいと期待してる。
アヴリルが同じカナダ出身のSUM41のフロントマンと結婚した時は、若くしてそう来るか!と思ったが、その次がニッケルバックのあのおっさんっていうのは驚いた。やはり彼女の感性は古いというか、ちょっとズレてるのかもしれない。(k)
2012年11月18日日曜日
リリー・アレン / オーライ・スティル
Lily Allen / Alright, Still(2006年リリース)
①Smile ②Knock 'Em Out ③LDN ④Everything's Just Wonderful ⑤Not Big ⑥Friday Night ⑦Shame For You ⑧Littlest Things ⑨Take What You Take ⑩Friend Of Mine ⑪Alfie
俺は時々「おねーちゃんヴォーカル」のポップ・ミュージックが聴きたくなる。決してロックではなく。前にパティ・スミスのところで書いたけど、俺は女性ミュージシャンにロックなんてものは求めていない。デビューこそ女性ロッカー然として登場しても、時が経つにつれて結局は「女」である自分を売りにしているなんて人を見ると、最初からポップ・ミュージックでもやっとけよとか思ってしまう。それに「ロックだぜ」みたいなアティチュードの女性ミュージシャンは、ごめん、本当に個人的な思いだけで書かせてもらうけど、見ていて「痛い」と思ってしまう。芸能界でいうなら土屋×××みたいのとか。だから俺は最初からポップである人を好んで聴いている。
さて、リリー・アレンである。どこでどう知ったのか忘れてしまったが、俺が彼女を知ったのは2枚目のアルバム『イッツ・ノット・ミー、イッツ・ユー』に収録されている「ファック・ユー」という曲がきっかけだ。可愛らしいメロディと声で「ふぁっきゅー、ふぁっきゅべりべりまぁぁぁぁぁっち♪」と歌っているのが妙に耳に残って、その声とタイトルのギャップにこいつはただ者じゃないなと感じたのだ。案の定調べてみるとかなりの毒舌で話題を振りまいていたし、かのケイティ・ペリーに「私はリリー・アレンの痩せたバージョン」と言われてブチ切れてたり、20代前半のクソ生意気なところが面白い。その一方で、彼女の父親はザ・クラッシュの故ジョー・ストラマーと友人で、子供の頃には一緒にグラストンベリーに連れて行ってもらったりしながら、音楽的な影響を受けてきたという。母親だか叔母がスリッツのメンバーだったなんて話もデビュー時にはあったけど、どうやらこれは違うらしい。
そんなわけで最初は2枚目のアルバムを聴いていたんだけど、人から「1枚目のほうが良い」と言われて手に入れたのがこの『オーライ・スティル』。リリースされてからすでに3年が経っていたから完全なる後追いなんだけど、確かにこっちのほうが曲が粒ぞろいだった。やはり白眉なのは①で、タイトルの「スマイル」という単語が持つ優しさや温かいイメージはそこには無い。何せ歌っている内容は付き合っていた男にフラれて落ち込むも、その元彼が他の女と別れて泣いているのを見ると「笑っちまう」というものなのだから相当意地が悪い。他にも⑤や⑦は付き合った男をモチーフとしているような内容だったり、②はナンパしてきた奴を追い払う方法を歌っていたりと、まあ20代前半の女の子が言いそうなことを、奇麗事にしないでストレートに言い放っているというところが良い。曲はレゲエやスカのリズムを取り入れたものや、ラウンジ系なものなどが多くて聴きやすいところもまたいい。それにしてもイギリスのポップ・シンガーって必ずレゲエ調の曲があるよね、特に女子!なぜだ!?
で、2枚目のアルバムを出した後、彼女は音楽から引退するとか言い出して、流産や結婚、出産といったニュースで時々名前を見るぐらいになってしまったんだよ。ところが今年、結婚後の名前であるリリー・ローズ・クーパーという名義で音楽活動を再開するなんてニュースが出てきて、来年には3枚目となるアルバムがリリースされる予定らしい。1児の母親となった彼女が以前のように尖がった内容の歌を歌うとは考えられないんだよなぁ。でも例え作風が変わってもそれほどガッカリしないだろうってところがポップ・ミュージックであるがゆえなんだろうな。ご都合主義。(h)
【イチオシの曲】Everything's Just Wonderful
もちろん"Smile"や"他の曲も良いんだけど、アルバムをいちばん最初に聴いて印象に残ったのがこの曲だった。サビの部分はどこかで聴いたようなメロディで、もしかして引用かなとも思うんだけど、いまだに思い出せない。だけどそんなことはどうでもいい、良い曲だから。
2012年9月16日日曜日
ザ・ストロークス / イズ・ディス・イット
The Strokes / Is This It(2001年リリース)
①Is This It ②The Modern Age ③Soma ④Barely Legal ⑤Someday ⑥Alone, Together ⑦Last Nite ⑧Hard To Explain ⑨New york City Cops ⑩Trying Your Luck ⑪Take It Or Leave It
天に二物を与えられたような人が羨ましい。野球で言うところの四番でピッチャー。俺は神に対して「何故こんな不平等な世界を作ったのか?」と問い詰めたいと常々思ってる。でも、神様なんて居ない。だが、下した腹を抱えてトイレを探し求めている時だけは、神という存在に祈ることはよくある。
時は20世紀末、俺は人生のマイルストーンを幾つか迎えては越えを繰り返しておっさんになり、身も心もすっかり丸くなってしまった。そして、音楽(産業)に対する忠誠心をすっかり失ってしまった結果、CDの購入枚数が激減した。そんな状況下で、音楽誌ロッキング・オンの紙面でストロークスを最初に知った時は、その佇まいを見て「あぁ、またハイプね、フフン」程度の印象であった。幼稚な劣等感(コンプレックス)に精神を歪まされている俺は、ニューヨークから出てきたアッパークラスでグッドルッキングガイなストロークスというバンドを斜に構えて捉えることしかできなかったのだ。その音楽を耳にするまでは。
ストロークスを語るにあたり、同じくニューヨーク出身であるヴェルヴェット・アンダーグラウンド等が引き合いに出されることを散見する。確かにサウンド自体は良い意味でも悪い意味でもレトロなロックを思い起こさせるが、しっかりとしたフックとキャッチーなフレーズがあり、それらのバンドが持っていたアート的な雰囲気よりもポップソングであることが前に出ている。またストロークスは、ガレージロック・リバイバルの中心的なバンドのひとつと言われているようだが、ガレージという言葉から連想される小汚さからは程遠い。ルックスなど音楽そのもの以外の情報過多で先入観があることは認めざるを得ないが、ストロークスにはロックンロールという言葉がしっくりくる。同様に先入観で申し訳ないが、ガレージロックという言葉ならホワイト・ストライプスの方がお似合いだ。
ストロークスのブレイクには、ブリッド・ポップが失墜しレディオヘッドのポスト・ロック的なアプローチの後、ギターを中心とした骨太なロックへの揺り戻しという時代の流れの後押しがあったのかもしれない。しかし、このアルバムに収録されている曲はどれも小細工不要でシンプルであり、ただただ素晴らしく、そのような後押しがなくてもブレイクは必至だったろう。たった36分のアルバム全体を通した流れよりも、シングルカットできる曲が目白押しであることが驚異的である。デビューE.P.のタイトルトラックである②の他、⑤、⑦、⑧がシングル・カットされているが、それ以外も佳曲ばかりだ。さらに驚いたことには、フロントマンであるジュリアン・カサブランカスがこの『イズ・ディス・イット』の作詞作曲を全て手掛けているのだ。なんだ完璧(パーフェクト)超人か。その四番でピッチャーのジュリアンのワンマン・バンドとは思わせないような雰囲気、バンド然としているところも良い。実情は知らないが。
さて、ここまで書いておいて何だが、俺はストロークスのことが素直に好きになれない、ということを白状しておこう。その理由のひとつが、自分とは正反対のスタイリッシュで洗練されていることへの劣等感(コンプレックス)であるのは言うまでもない。そして本題。イギリス(北アイルランド)のバンド、アッシュが『1977』というアルバムを出し、それが意味するところのひとつが「自分たちの生まれた年である」というのを1975年生まれの俺が知った時のなんとも言えない感覚をおわかりいただけるだろうか。甲子園ではつらつとプレーする高校野球の選手達が、いつの間にか自分より年下であることの意味を改めて噛み締めたあの時と同じだ。憧れや尊敬の対象が自分より年下であることへの抵抗感と劣等感(コンプレックス)である。結局は、おっさんになり感受性が鈍ってしまったことで物事を素直に捉えることができなくなってしまった自分が悪いだけなのだ。だから、これらバンドの創る音楽がどんなに素晴らしいものかということを頭で理解できても、心の底から好きになれない自分がいる。その結果、昔は良かったなどと90年代を懐古するおっさんに成り下がってしまった。そう、俺がおっさんになってしまったという単純な理由なのだ。
冒頭、神様の存在を否定したおっさんの俺だが、今年に入ってこんなことがあった。完璧(パーフェクト)超人のはずのジュリアンがイケてない野球帽(キャップ)を被り、肥えた身体でパフォーマンスする姿がただのおっさんにしか見えなかったのだ。その時、俺の劣等感(コンプレックス)はいくらか鳴りを潜め、神様の存在を肯定できそうな気がした。ところで、この文章中で俺は何回「おっさん」とか「劣等感(コンプレックス)」とか書けば気が済むのだろうか。(k)
登録:
投稿 (Atom)





