2013年1月13日日曜日
スティーヴ・ミラー・バンド / 未来の子供たち
Steve Miller Band / Children Of The Future(1968年リリース)
①Children Of The Future ②Pushed Me To It ③You've Got The Power ④In My First Mind ⑤The Beauty Of Time Is That It's Snowing (Psychedelic B.B.) ⑥Baby's Callin' Me Home ⑦Steppin' Stone ⑧Roll With It ⑨Junior Saw It Happen ⑩Fanny Mae ⑪Key To The Highway ⑫Sittin' In Circles
スティーヴ・ミラー・バンドというと、80年代に「アブラカダブラ」という曲が全米No.1になったというのが認識の大部分を占めていて、あとは70年代の『ザ・ジョーカー』や『鷲の爪』といったアルバムが大ヒットしたというぐらいしか知らなかった。だからこのバンドが1966年に結成されて、このデビュー・アルバム『未来の子供たち』が1968年にリリースされていたということに若干の驚きがある。そんなに歴史のあるバンドだったとは。そしてもう1つ驚いたのはサンフランシスコ出身だということ。ずっとイギリスのバンドだと思っていた。
もともとはスティーヴ・ミラー・ブルース・バンドと名乗っていたようで、その名のごとくブルースをメインに演奏していたバンドだったようだ。その後モンタレー・ポップ・フェスティヴァルなどで注目を浴びるようになってコロンビアからレコード・デビューしたとのこと。それだけだったら別に俺は70年代の有名どころのアルバムを聴くぐらいで、ここまで遡って聴いてみることはしなかっただろう。なんとこのアルバムには後にAORの代名詞ともなるボズ・スキャッグスがメンバーとして参加しているのだ。バッグパッカーとして放浪していたとのことだが、どのような経緯でバンドに加わったのだろうか!?今の両者からはなかなか想像できない組み合わせである。
アルバムはアナログで言うところのA面にあたる⑤までは組曲のようになっていて全曲が繋がっている。①のイントロがサイケデリックしているが、②③はそれぞれ1分にも満たない小品でワンコーラス歌われるだけで壮大な④へと繋げられる。そして再びサイケデリックな⑤という、個人的にはかなり好きで一気に聴けてしまう。そしてボズ・スキャッグスは⑥と⑦の2曲を提供。前者は牧歌的なタイプの曲だが、⑦ではボズの甲高いヴォーカルと、スティーヴ・ミラーの激しいギターが聴き所だろう。また、⑨と⑩はドラマーのティム・デイヴィスがヴォーカルをとっている。他はカバー曲のようだ。全体的にはサイケデリックとブルースを混ぜたようなところが多いが、この時期のタートルズやフランク・ザッパの『アブソルートリー・フリー』みたいな趣きも感じられる。
プロデュースはミラーとグリン・ジョンズなのだが、グリン・ジョンズといえばこのアルバムの翌年にはビートルズの悪夢だった「ゲット・バック・セッション」から作られる予定だった『ゲット・バック』のマスターを手がけた人物。それが縁なのか、3枚目のアルバムの製作時にイギリスに渡ったスティーヴ・ミラーはビートルズのメンバーとセッションをしたり、ニッキー・ホプキンスとの録音などを行っていたようだ。そしてその後であるが、ボズ・スキャッグスはこのアルバムのみでソロへ転向。他のメンバーも流動的で1971年にはミラーが交通事故で休養を余儀なくされるというアクシデントもあってバンドとしては決して順調ではなかったようだ。このバンドが大きく化けるのはミラーが怪我から復帰してからということになる。(h)
【イチオシの曲】In My First Mind
このアルバムのA面に当たる最初の5曲は組曲のようになっているのだが、そのハイライトとも言えるのがこの曲。メロトロンを使用した壮大な曲で、ここにたどり着くために最初の3曲が短く作ってあるんじゃないかと思ってしまう。そして続く⑤はその余韻のような感じがする。
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