2012年9月9日日曜日

ジョン・レノン / ジョンの魂


John Lennon/Plastic Ono Band(1970年リリース)
①Mother ②Hold On ③I Found Out ④Working Class Hero ⑤Isolation ⑥Remember ⑦Love ⑧Well Well Well ⑨Look At Me ⑩God ⑪My Mummy's Dead

中古CDでジョン・レノンの棚を見ると、『イマジン』とこの『ジョンの魂』を多く見かける。ジョンといえばこの2枚がやはり人気がある分こうして中古も見かけるのだろうけど、これを売りに出した人たちは最初にジョンの音楽に何を求めてこの2枚を選んだのかなと考えてしまう。いや、俺も実を言うとかつて持っていたこの2枚のアルバムを売ったことはあるが、それは貧乏時代にやむを得ずしたことであって、特に『ジョンの魂』は一度聴いたら一生持っていたいロック・アルバムだと思っていたのですごく後ろめたい気分だった。

『ジョンの魂』のような人間味を感じるアルバムにはめったに出会えない。心の中にある言葉を正直に吐き出していて、バックも最低限の音だけで飾ったようなところが1つも無い。ビートルズの影はここにはどこにも無く、これがこのアルバムを初めて聴いた時に戸惑う理由なのかもしれない。俺はジョン・レノンについては2つの「後追いで良かった」と思えることがある。1つはジョンの死のことで、当時小学6年生だった俺はジョンが亡くなったというニュースを見ても誰なのかよく分かっていなかった(その翌年からビートルズを聴くようになった)。そしてもう一つがビートルズのリアルタイム世代ではなかったこと。もしビートルズの解散を目の当たりにしたあとに『ジョンの魂』を聴いていたら相当ショックを受けたんじゃないかと思う、特に⑩の「ビートルズも信じない」なんて言葉を聴いたりしたら。

初めて①のイントロで鳴る鐘の音を聴いた時は正直怖いと思った。俺もまだ学生の頃はジョンの曲といえば有名どころというか、「スターティング・オーバー」や「イマジン」など、所謂ベスト盤に入っているような曲しか知らなかったからこのイントロの重さは凄まじかった。そしてフェイド・アウトするにつれてジョンは声を振り絞るように叫ぶ「ママ、行かないで」と。早くから両親不在で育ってきたジョンにとって、ようやく一緒に母親と暮らすことができるという時に交通事故で亡くしてしまったショックというのはずっとジョンにつきまとっていたのだろう。それをプライマル・スクリーム療法でその気持ちをさらけ出したのがこの曲だ。乱暴な言い方をしてしまうと『ジョンの魂』はこれに尽きるのではないかと思う。①で聴くものをふるいにかけている感がものすごくする。この生々しさに耐えられる者がきっとこのアルバムをずっと聴き続けるのだと思う。

このアルバムは他にも②や⑤や⑨など、ジョンの心の中を歌っているような曲が多いし、⑧や⑩のような攻撃的なジョンも垣間見える。そうかと思うと今ではスタンダードのような⑦も入っていて、『ジョンの魂』という邦題はよくぞつけてくれたと思うぐらいピッタリなタイトルだと思う。まさにジョンのソウル(魂)が感じられるアルバムだし、このアルバムを体験したロックと体験していないロックとでは方向性が180度違うよねって言いたい。そしてビートルズのジョン・レノンに魅了されている人でこのアルバムを聴いていないという人がいるなら、一度は体験しておくべきアルバムと言っておきたい。(h)

【イチオシの曲】Mother
本文にも書いたが、冒頭のこの曲でこのアルバムを聴けるかどうかが分かれるのではないかと思う。ジョンは早くから両親と別離していたこともあって、タイトルだけだと母親のことのようだけど、「パパ帰ってきて」とも叫んでいる。実際、ジョンの父親はジョンがビートルズで成功してから名乗り出てきて、ちゃっかりジョンから援助してもらっていたそうだ。


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