2013年4月21日日曜日

ヘルメット / ストラップ・イット・オン


ヘルメット / ストラップ・イット・オン

Helmet / Strap It On (1990年リリース)
①Repetition ②Rude ③Bad Mood ④Sinatra ⑤FBLA ⑥Blacktop ⑦Distracted ⑧Make Room ⑨Murder

ヘルメットというバンドについて、大きい括りで言えばオルタナティヴロックということになるだろう。無機質でハードなサウンド故、ジャンクとかノイズとかいう言葉を使って紹介されるが、これらは耳障りで機械的な音を出す、あるいは/または、即興性の高い楽曲を創ったりする人たちを指す言葉だと思われる。奇をてらうようなことをせず、きっちりと構築、コントロールされたヘルメットのサウンドに対し、ジャンク、ノイズと形容するのはどうもスッキリしない。個人的にはポストハードコアという言葉がしっくり来るけど、この言葉も適用範囲が広すぎて何の説明にもなっていないような。ちなみに英語版Wikipediaでは、オルタナティヴメタルということになっている。ところで「ジャンク」というある音楽カテゴリを指す言葉は、「メロコア」と同じく日本で作られたもので日本でしか通じないから注意が必要だ。

言葉遊び的なことをツラツラと書いてしまったが、ヘルメットを一聴するとやはりメタルな印象が強い。しかし、その音にはハードロックであるとか、ヘアメタルであるとかとは一線を介した緻密さやストイックさがあり、もっと言うと機械的で冷たく、打込みに近いような硬いサウンド、リズムからは、情緒や人間性すら排除されているように感じる。見た目もハードロックやメタルからはかけ離れていて、短髪Tシャツジーンズスニーカーと、グランジ/オルタナティヴのムーブメントの一翼を担う存在だった。メタル的でありながら、メタルとは異なる存在。オルタナティヴメタルという言葉に相応しい。

この1stアルバム『ストラップ・イット・オン』は、90年にアンフェタミン・レプタイルからリリースされた後、91年にインタースコープから再リリースされた。荒削りながら、この1stアルバムの時点で既にサウンド、楽曲の根幹は確立されているのは、中心人物のペイジ・ハミルトンがキチンとした音楽の教育を受けていることも関係しているだろう。ハードロックやへヴィメタルとは無縁と思われがちな音楽理論といったものに裏付けられた楽曲は、当時としては真新しく、ニューメタルとかモダンヘヴィネスとか言われるような90年代以降に登場したメタルバンドに与えた影響は計り知れない。

90年代初頭のグランジ/オルタナティヴの流れに乗り、この1stアルバムに続いて92年にリリースされた2ndアルバム『ミーンタイム』でヘルメットは早くも成功を収める。94年リリースの3rdアルバム『ベティ』は、ジャケットも含めより広い層にアピールできる判りやすさもあった。4thアルバム『アフターテイスト』を97年にリリース後、98年には一度解散するが、04年に活動を再開。結局はヘルメット=ペイジ・ハミルトンであり、ヘルメットはメンバーを入れ替えながらも現在まで精力的に活動を継続している。また、ペイジ・ハミルトンの趣味なのか、参加する企画盤のカバー曲の選定がなかなか興味深い。Black SabbathやLed Zeppelinといったハードロックやメタル系は想定の範囲内だが、Bjorkの'Army of Me'、はたまた鉄人28号の海外版"Gigantor"のテーマまでもカバーしている。

ヘルメットを未聴で興味を持たれた方は、まずはとっつき易い『ベティ』あたりから是非聴いてみてほしい。最後に、今回ヘルメットを取り上げた動機のひとつは、㌻・ハミル㌧って書きたかったことを白状しておく。(k)





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