2012年11月25日日曜日

クィーン / 戦慄の王女


Queen(1973年リリース)
①Keep Yourself Alive ②Doing All Right ③Great King Rat ④My Fairy King ⑤Liar ⑥The Night Comes Down ⑦Modern Times Rock'n'Roll ⑧Son And Daughter ⑨Jesus ⑩Seven Seas Of Rhye...

俺がいわゆる「洋楽」というものを聴き始めた中学生の時からクィーンは常に好きなバンドの1つであった。だけど今ではかなり偏ったファンであると思っている。フレディ・マーキュリー亡き後も多くのファンを獲得し定期的に様々な編集盤がリリースされているが、それらの類に対しては俺は否定的で、ベスト盤についてはバンドが存在していた時にリリースされた『グレイテスト・ヒッツ』と『グレイテスト・ヒッツ2』こそが真のベスト盤だと思っている。特に『グレイテスト・ヒッツ』は彼らのデビューから1982年までの、それこそ今でも聴き継がれている曲ばかりが入った最強のアルバムで、これ以上の選曲は出来ないんじゃないかと思うほどの内容だ。彼らのいちばんの代表曲である「ボヘミアン・ラプソディ」を1曲目に持ってきてもなお、その後の10数曲のクオリティが下がることがないのだから。

しかしその『グレイテスト・ヒッツ』に収録されている曲目を見ると、1stアルバムからの曲が選ばれていないのだ。⑩が入っているじゃんと思う人もいるかもしれないが、これは1分ちょっとのインストゥルメンタルであって、実際は2枚目のアルバムのフルバージョンが選ばれている。そのため俺にとっては長らく1stアルバムの曲をまったく知らずに10年以上を過ごしてきてしまったという経緯がある。20歳を超えてから徐々にクィーンのアルバムを揃え始め、その時にようやくこの『戦慄の王女』を聴いたのだがそれまでの10年ぐらいで『グレイテスト・ヒッツ』で慣れ親しんだ曲が入った他のアルバムにばかり夢中になり、このアルバムについてはまだ影の薄い存在のままだった。

クィーンの魅力はよく言われるように、ハードロックとオペラやクラシックなどを組み合わせた独特の音楽性がその1つであるが、それは主にフレディ・マーキュリーが持っていたセンスが前面に出てきた3枚目か4枚目のアルバムあたりからのことを指していると思っている。それまでの彼らはどちらかというとハードロック・バンドとしてデビューしていて、その当時はレッド・ツェッペリンと比較されるほどだったと読んだことがある。ただやはり『グレイテスト・ヒッツ』を愛聴してきた俺にはそれがピンとこなくて、それが原因で1stアルバムもなかなか馴染めなかった。ところが90年代に『At The Beeb ~女王凱旋』というBBCライヴを収録したアルバムでハードロック・バンドとしてのクィーンの魅力がようやく分かってきたのだ。そのアルバムには1stアルバムから7曲が入っているのだが、スタジオ録音ではこじんまりしているように聴こえていた楽曲が、BBCライヴでは水を得た魚のようにハードロックしている様が記録されている。特に⑧にはぶっ飛んだものだ。

こんなことを書くとまるで1stアルバムの出来が悪いように思われてしまいそうだが、それは俺の聴き方が足りないだけなので勘違いしないで欲しい。①は長いことライヴの定番となっていたし、②のようなレイドバックした曲は彼らにしては珍しいが70年代前半ならではという感じだ。また③や⑤の展開などは早くもフレディの個性がよく出ていて、そしてやはり⑧は初期の彼らならではのヘヴィさが特徴的だ。そして全体的にブライアン・メイのギターの多重録音によるオーケストレーションが施されていて、1stアルバムからすでにハードロックの域を超えた独自のアレンジを聴く事ができる。後の彼らの定番曲のような劇的な展開まではいかないが、これはこれで聴いておくべきアルバムであることは間違いない。

冒頭で『グレイテスト・ヒッツ』を真のベストアルバムと書いたが、俺は本当はこれはオリジナル・アルバムと言ってもいいんじゃないかと思っているぐらいだ。それだけに『戦慄の王女』から1曲もチョイスされていないのが何とも残念だ。それにしても俺はどっちのアルバムのことを書きたかったんだという気もするが・・・。(h)

【イチオシの曲】Son And Daughter
ハードロック・バンドとしてのクィーンとして挙げるべき曲。アルバムでは3分台で簡潔に終わるが、これがライヴになると後の「ブライトン・ロック」のブライアンの通称「津軽じょんがら節」ギターがインプロビゼーションとして追加されているがこれがまた最強すぎる。

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