2012年11月11日日曜日

ガンズ・アンド・ローゼズ / アペタイト・フォー・ディストラクション


Guns N' Roses / Appetite for Destruction(1987年リリース)
①Welcome To The Jungle ②It's So Easy ③Nightrain ④Out Ta Get Me ⑤Mr. Brownstone ⑥Paradise City ⑦My Michelle ⑧Think About You ⑨Sweet Child O' Mine ⑩You're Crazy ⑪Anything Goes ⑫Rocket Queen

1991年。それはCDのレンタル禁止期間が1年となった年らしい。記憶があやふやで時期が定かではないが、それと前後してレンタルビデオ屋の店頭には「洋楽CD解禁」みたいなポスターが貼られていたのを思い出す。その頃、その店頭で俺が初めて手に取った洋楽CDがガンズ・アンド・ローゼズの『ユーズ・ユア・イリュージョンⅠ』であった。残念ながら、なぜ俺がその作品をレンタルしようという結論に達したのかは思い出せずにいる。借りてきた『ユーズ~』を、買ったばかりのビクターのミニコンポMEZZO(イメージ・キャラクターに高岡早紀を起用)で再生する。ダフのベースに始まり、スラッシュのギターが絡んだ後のアクセルの金切り声を一聴し、雷が落ちたような衝撃を受けるようなこともなく。74分のメタルテープ(TYPE IV)にダビングし、買ったばかりのウォークマンを身に着け、片道50分の通学路で自転車を漕ぎながらひたすら繰り返し聴いた。これが俺とガンズ・アンド・ローゼズ、ひいてはハードロックとの出会いだった。

1991年といえば、ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』、マイ・ブラッディ・バレンタインの『ラヴレス』、ティーンエイジ・ファンクラブの『バンドワゴネスク』、メタリカの『メタリカ』(通称ブラックアルバム)といったロックの傑作がリリースされ、これ以外にも枚挙に暇がない。俺がこれらのアルバムを聴くのはもう少し後のことだが、『ユーズ~』および『ユーズ・ユア・イリュージョンⅡ』はほぼリアルタイムで聴いていたことになる。そして、この文章の主題であるガンズ・アンド・ローゼズの1stアルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』がリリースされたのはそれより遡ること4年ほど前。完全に後追いだった。

友人が「リップルレーザーのような」と形容したスラッシュのギターで始まる①は、2002年のサマーソニックでも1曲目に演奏された。残念なことにそれを奏でていたのはスラッシュではくバケットヘッドという変人だったが、それはそれで甚く興奮した。「悦子の母乳だッ!」を生で聴けて幸せだった。そうそう、このアルバムのスゴいところのひとつは、テレビ朝日の番組「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」で採用されたネタの宝庫なのだ。②の「足を刺されりゃそりゃ痛てえっす♪」、③の「あっ、何ですか?」、「タマキン蹴ったっ!」、⑤の「兄貴の位牌♪ヤクザ!」などの作品が生み出された。また、ネタとしてだけでなく、高性能なハードロックのアルバムとしても大変素晴らしい。このアルバムは、現在でもライヴで演奏される多くの代表曲を収録し、①、②、③、⑥、⑨がシングルカットされるなど、1stにして完成されてしまった感すらある。特に⑨は、そのリフが現在でも高く評価されている。差し替えられた現在のジャケットも、このバンドのマスターピースとしてふさわしい出来だと思う。そこに描かれたメンバーは代わってしまってはいるけれども。

ガンズ・アンド・ローゼズは、所謂ヘアメタルと揶揄される多くのバンドの延長線上に居ることに間違いはないが、ハードロックやヘヴィメタルという型に収めるには抵抗がある。上手く言葉にできないが、一つだけ例を挙げさせてもらえば、日本の音楽誌BURRN!とロッキング・オンの両方の表紙を飾ったことがあるアーティストはガンズ・アンド・ローゼズくらいではないだろうか。

デビューから90年代前半までのガンズ・アンド・ローゼズは、ロックスター然とした退廃的な私生活や、音楽そのものがハードロックという範疇から外れる事はなかった。しかし、アルバム2枚同時リリースや、ボブ・ディランからミスフィッツまで多くのカバー曲を発表するなど、その挑戦的な態度は産業ロックからは一線を引く存在ではあった。その一方、セックス・ドラッグ・ロックンロールを地で行くメンバー同士が、バンド内で平穏な関係を維持するのは困難だと想像に難くない。実際、短い期間にメンバーチェンジを繰り返し、現在はアクセル・ローズのソロプロジェクト状態である。バンドは完全に機能不全に陥り、『ユーズ~』に続くオリジナル・アルバム『チャイニーズ・デモクラシー』をリリースするのに17年もの時間を要したが、過去のようなヒット作にはならなかった。スラッシュも音楽活動を継続してはいるが、ライヴではガンズ・アンド・ローゼズの曲を演奏するなど、過去の遺産に頼っている部分はある。

90年代初頭には、グランジ/オルタナティヴのムーブメントに飲み込まれ、化石の烙印すら押された感のあるガンズ・アンド・ローゼズ。94年にはカート・コバーンの死でそのムーブメントも一区切りがついた。それから20年近く経った現在でも、アクセルをはじめとするメンバー達は今も不良なオッサンとして活躍している。「消え去るより、燃え尽きた方がいい」なんてことはなく、懐メロになろうがカッコ悪かろうが生きてる方がいいと、俺は思う。(k)

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