2012年11月4日日曜日

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ


The Velvet Underground & Nico(1967年リリース)
①Sunday Morning ②I'm Waiting For The Man ③Femme Fatale ④Venus In Furs ⑤Run Run Run ⑥All Tomorrow's Parties ⑦Heroin ⑧There She Goes Again ⑨I'll Be Your Mirror ⑩The Black Angel's Death Song ⑪European Son

今や歴史的名盤としてその名を残すこのアルバム。俺は高校生ぐらいの時に「ロック名盤」なる本に載っていたのを読んで初めて知ったのだけど、そこでどういうことが書かれていたかあまり覚えていない。覚えていることといえば、リリースされた当時はまったく売れなかったということと、もうひとつはジャケットのバナナのシールが「剥がせる」ということだった。俺はその「剥がせる」ということに興味を持った、中の音楽よりも先に。確か19歳ぐらいの時だったと思う。その頃は古いロックのLPはもっぱら輸入盤に頼ることが多く、輸入盤を見てもジャケットのバナナは印刷さているもので剥がせそうになかった。しかし、池袋のパルコに入っていた銀座山野楽器で、日本盤のLPを見つけたのだ。もちろんバナナの部分はシールになっていた。迷わず買ったのは言うまでもない。

先にも書いたがリリースされた1967年当時はまったく売れず、ビルボードのアルバムチャートでも170位台が最高だったという『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』。それが45年経った今でも聴き継がれて世界中に大きな影響を与えているという、これこそ伝説という言葉が相応しいアルバムだが、当時すでにポップ・アートの第1人者だったアンディ・ウォーホルの名前をジャケットの表に出し、バンドの名前は裏に書かれているという点はウォーホルの作品(バナナの絵)のオマケとしてレコードが付いているという印象を与えてくれる。実際はどうだったか知らないが、バンドとしてもウォーホルに乗っかろうという意図はあったかもしれない。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドというバンド自体は1965年にはすでに結成されてデモテープも残されているが、それを聴く限りではフォーク・ロック色が強く、まだまだこのアルバムの音とは繋がっていかない。ジョン・ケイル、ルー・リード、そしてスターリング・モリソンが元々持っていた音楽性がウォーホルとの出会いなどを経て覚醒していったのかと勝手に想像している。もちろん、そこにはドラッグの影もちらほらと。

当時19歳だった俺はなんと言っても⑦が魅力的だった。ヘロインを打ったあとの様子を実況しているような内容のドラッグ・ソングという理由だけで。それだけで好きな曲だなんて今思うと単純すぎるが、若い時なんてのはそんなものだ。そして当時は軽視していたのが①で、今でいうならソフト・ロック風なのだけどバックで鳴っているドローン風な音が少しずつ恐怖を与えると感じてからは、実はすごい曲なんだなと思うようになった。これを1曲目にもってきたのは大正解なのだと。「日曜日の朝」なんてそんな清々しい邦題でいいのだろうか!?そして、ドイツ出身のモデル、ニコのヴォーカルがフィーチャーされているのは③⑥⑨の3曲だが、どれを聴いても地下室から聴こえてくるような雰囲気を醸し出してて、最もアンダーグラウンドっぽいんだよなと思う。個人的にはあまり好きじゃないけど。あとは②や⑤などの、ルー・リード風のロックンロールはもはや古典と言ってもいいだろう。ドラッグやSMやアブノーマルな世界を歌ってる曲が多いという点も若者には魅力に感じたものだ。

さて、バナナの部分がシールになったレコードを買ってきた俺は、レコードを聴きながら上の方の部分を剥がしてみた。なぜ上の方の部分かというと、"Peel Slowly and See"と書いてあるからだ。バナナをめくるとちゃんとバナナの実が出てくるが、全体がピンク色に覆われている。本当は全部剥がしてみたかったが、そうしたら元の形に貼れないのではと思って半分ぐらいまでしか剥がした事がない。でも1度は全部剥がしてみようと思っていたのだが、後に知り合った友人が同じく剥がそうとしてバナナを真っ二つに破ってしまったと話すのを聞いてからはやめとこうと思ったのだ。だからLPを持っているにも関わらず、未だこの目でピンク色のバナナを全部見たことはないし、きっと今後も見ることはないと思う。(h)

【イチオシの曲】European Son
19歳当時はどちらかというと嫌いな曲だった。8分ぐらいあって、ヴォーカルが最初の1分以内で終わってあとはハチャメチャな演奏が延々と続くからというのがその理由。だけどノイズやらなんだといろいろと聴くようになってきてからはアルバム中最も好きな曲となっている。ヴェルヴェッツのアルバムでは凶暴さしかない2枚目の『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』が最も好きなのだけど、それに通じるものをこの曲は持っている。ちなみにバナナ・アルバムではこの曲、2枚目は"The Gift"、3枚目は"The Murder Mystery"が好きという、かなりの偏りかたであることを書いておきたい。

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