2013年1月20日日曜日

ロキシー・ミュージック / Roxy Music


Roxy Music(1972年リリース)
①Re-Make/Re-Model ②Ladytron ③If There Is Something ④Virginia Plain ⑤2HB ⑥The Bob (Medley) ⑦Chance Meeting ⑧Would You Believe? ⑨Sea Breezes ⑩Bitters End

学生の頃、当時の友人Aが別の友人Bにこのような質問をしていた。「ロキシー・ミュージックってどんな音楽なの?」と。友人Bはロキシーの音楽性について説明してあげたようだが、友人Aはどうも釈然としない。そりゃそうだ、Bはロキシー・ミュージックがどういう音楽をやっているのかを説明したのだが、質問をしたAは「ロキシー・ミュージック」というジャンルがあるのだと思って聞いたそうだ。「カントリー・ミュージック」とか「ポップ・ミュージック」と同じような意味で。当時はそれを聞いて笑ってしまったが、名前だけ聞いたら数ある音楽ジャンルの1つと間違えてもおかしくはない。実際、ロキシー・ミュージックってどういう音楽をやっているのかと問われると答えに悩む。後期の『アヴァロン』なら英国産のAORまがいな音楽と言ってしまえばなんとなく説明がつくが、初期の彼らの音楽性については何て答えたらいいのだろうか?デビュー当初はメンバーの派手ないでたちやデヴィッド・ボウイのジギー・スターダスト・ツアーの前座なども行っていたことからグラム・ロックの一派で括られるが、それはどちらかというとファッション的な部分の説明だ。

ロキシー・ミュージックはブライアン・フェリーがバンドメンバーを集めたところから始まる。この期間中に彼はキング・クリムゾンのヴォーカル・オーディションを受けて落ちたという経緯がある(同じオーディションにエルトン・ジョンもいた)。バンドは何度かメンバーの入れ替えがあり、デビュー時のメンバーはフェリー(ヴォーカル)、アンディ・マッケイ(サックス)、フィル・マンザネラ(ギター)、ポール・トンプソン(ドラム)、そしてブライアン・イーノ(シンセサイザー)で、ベーシストは固定メンバーではなかった。このラインナップになる前、マッケイは当初はシンセ奏者として加入したが、イーノが後から来たことで木管楽器に移ったし、マンザネラはイーノの助手としてサウンドミキサーとしてやってきたのに、ギタリストが脱退したことでギターを担当するようになる。どのパートも最初から専任というわけではなく、このため初期の彼らはノン・ミュージシャンの集まりなどと言われる。そしてデビュー前のミュージシャンによくあるライヴハウスのドサ回りのようなこともせず、数度のライヴでフェリーをオーディションで落としたEGレコードに見初められて契約を結んだ。

このデビュー・アルバムではそのノン・ミュージシャンぶりが発揮されていると言ったら言い過ぎかもしれないが、①を聴くとついそう思ってしまう。ノリとしてはロックンロールなのだが、フェリーのヴォーカルの後ろではマッケイのサックスが一定間隔で同じ音を鳴らし、マンザネラは好き勝手にフレーズを弾いているようで、イーノはさらにノイズを鳴らす。タイトルが示すようにそれまでのロック・ミュージックを解体して再構築したような感じではあるが、最後は無理やり収拾をつけて終わらせているような感じが良い。③はアルバム中のお気に入りの1曲であるが前半と歌部分から後半のインスト部分への流れが強引に感じるところがあるし、⑥の断片的な曲のつぎはぎな感じなど、全体的に良い意味での素人臭さのようなものがあるが、同時にフェリー(だと思うが)の美学が貫かれていると思う。また、ジャケットも当時は話題となったようで、通常バンドのデビュー・アルバムというのはメンバーのポートレイトかロゴとか訳のわからないデザインが多いが、見ての通りモデル(女優のカリ・アン)を起用し、その後のアルバムでも女性(たまに元男性である女性)がそのアルバム・ジャケットを彩っている。そして曲名のつけ方も⑤は鉛筆の濃さのようだが、邦題が「ハンフリー・ボガードに捧ぐ」とあるので、ああなるほどとなるし、⑥に至っては「ボブ家」についてかと思いきや"The Battle Of Britain"の略だそうだ。とういか、ボブ家ってなんだよw

そういえば②⑤⑩は1998年の映画『ベルベット・ゴールドマイン』で劇中の架空のバンドがカバーしていて、俺はそっちを先に聴いていた。後になってロキシーのこのアルバムを聴いて思ったが、やはり所詮カバー、ロキシーの持つ妖しさや美学のようなものまでは再現できていなかったな。

ロキシーは2枚目のアルバムのA面をクリス・トーマスにプロデュースさせることでポップな面を徐々に取り入れていく。そして「ノン・ミュージシャンは2人も要らない」とフェリーが言ったとかでイーノが脱退してしまう。フロントマンであるフェリーよりもイーノの方が人気があったと言うが、そのことに対する嫉妬と、アルバムのコンセプトを描いているフェリーにとってはイーノは不要となったのだろう。よってこのデビュー・アルバムは2人のブライアンのバランスを確認できる数少ない1枚であるということだ。(h)

【イチオシの曲】Re-Make/Re-Model
本文で記載したとおり。途中で各メンバーが順番にソロを取るのだが、「ピーター・ガンのテーマ」やビートルズの「デイ・トリッパー」などのフレーズが飛び出すのがいかにも再構築って感じですね。あとは曲を聴いて。



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