2012年7月29日日曜日

ザ・ストーン・ローゼズ / ザ・ストーン・ローゼズ


The Stone Roses / The Stone Roses (1989年リリース)
①I Wanna Be Adored ②She Bangs the Drums ③Waterfall ④Don't Stop ⑤Bye Bye Badman ⑥Elephant Stone ⑦Elizabeth My Dear ⑧(Song for My) Sugar Spun Sister ⑨Made of Stone ⑩Shoot You Down ⑪This Is the One ⑫I Am the Resurrection ⑬Fools Gold

青春時代にメタルとグランジの洗礼を受けてしまった俺は、自分とは正反対のスタイリッシュな英国産の音楽を毛嫌いし、泥臭い米国産の音楽の方を好んでいた。その傾向は今でも変わらないが、ロッキング・オンに掲載される情報を有難く拝見していた90年代後半には、ストーン・ローゼズが崩壊していく様を活字と写真で認識していたし、ソロ活動に転向したイアン・ブラウンの99年の来日公演を恵比寿で見ている。その公演のアンコールで演奏された「サリー・シナモン」が俺にとっての初めてのストーン・ローゼズだった。この時、1stアルバム『ザ・ストーン・ローゼズ』が発売されてから既に10年が経っており、ストーン・ローゼズを始めとするマッドチェスターと呼ばれるシーンに対して俺は全くの後追いだった。

その後何度もストーン・ローゼズ再結成の噂が浮上しては否定されてきたが、1stアルバム『ザ・ストーン・ローゼズ』発売から20年以上が経過した2011年、ついに噂が現実となる。長い沈黙を打ち破り活動を再開したマイ・ブラッディ・バレンタインと同様に、このニュースに歓喜した方々は相当数に上るだろう。この再結成に伴うワールドツアーの一環としてフジロック・フェスティバル'12の1日目(7月27日(金))のトリとして登場することが発表された。そしてその7月27日、苗場では数多くの参加者がストーン・ローゼズのTシャツを身に着けており、オフィシャルグッズの販売所では早々にストーン・ローゼズのTシャツが売り切れているのを目の当たりにした。そしてその日の演奏には様々な想いがあっただろうが、10年以上待ったファンに笑顔と感動を与えてくれるものであったに違いない。

今回のストーン・ローゼズのワールドツアーで演奏される楽曲は、ほとんどがこの『ザ・ストーン・ローゼズ』に収録されているもので構成されている。このアルバム1曲目を飾る①は、フジロック・フェスティバルのセットリストでも1曲目に演奏され、本来のアルバムの最終曲であった⑫は、同様にセットリストの最終曲として演奏された。アルバム『ザ・ストーン・ローゼズ』は何度かのリイシューで収録される楽曲にいくらかの違いがあるが、楽曲そのものだけでなくアルバムの流れ、構成も素晴らしいのだ。聴いた人の心だけでなく身体をも揺さぶるグルーヴとメロディがここにあり、ロックでも踊れるということを再認識させてくれる。また、今回の再結成に便乗してこのアルバムに関する本も出版された。2枚のオリジナル・アルバムしかリリースしていないにもかかわらず、この本はストーン・ローゼズというバンドに主眼をおいたものではなくあくまでアルバム『ザ・ストーン・ローゼズ』をフィーチャーしているのだ。このアルバムが後の英国の音楽に与えた影響は計り知れず、20年以上経過した今でも重要な作品として注目され続けている。

レーベルとの確執やメンバー間の不和などにより、バンド自身が『ストーン・ローゼズ』に封じ込めたのと同じマジックが使えなくなり、続く2ndアルバム『セカンド・カミング』は商業的成功を収めることができず、新たなマジックが生まれることもなかった。解散後のメンバーはそれぞれ様々な音楽的活動を続けたが、誰もストーン・ローゼズ以上のマジックを生み出すことはできなかった。完全に後追いの俺がこのアルバムを語るには体験や思い入れが少なすぎるかもしれないが、レニとマニのリズム隊によるグルーヴと、唯一無二のイアンのヴォーカルが歌いジョンが奏でるメロディの組み合わせが生み出すマジックの存在はこのアルバムが証明してくれるし、今日の彼らのライヴでその演奏を聴けば感じることができるはずだ。楽曲そのものに宿ったマジックは今もなお顕在するし、今の時代にも通用するのだから。(k)

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