2012年5月6日日曜日

ザ・ビートルズ / プリーズ・プリーズ・ミー


The Beatles / Please Please Me(1963年リリース)
①I Saw Her Standing There ②Misrey ③Anna(Go To Him) ④Chains ⑤Boys ⑥Ask Me Why ⑦Please Please Me ⑧Love Me Do ⑨P.S. I Love You ⑩Baby It's You ⑪Do You Want To Know a Secret ⑫A Taste Of Honey ⑬There's a Place ⑭Twist And Shout

ビートルズは1962年10月に「ラヴ・ミー・ドゥ / P.S.アイ・ラヴ・ユー」でデビューし、続く63年1月には「プリーズ・プリーズ・ミー / アスク・ミー・ホワイ」がヒットしたことによって急遽アルバムを作ることとなった。しかし彼らに与えられた時間はわずか1日で、当時のイギリスのLPレコードは14曲入りが定番だったから、先のシングルを収録してもあと10曲は必要だった。新人バンドで予算やスタジオの都合もあったかもしれないが、アルバムの録音だ!今日だけしか時間取れないぞ!10曲必要だからな!と無茶ぶりされているかのような状況だったのに彼らはそれをやってのけた。10曲を10時間で録音し終えたのだ。

俺はこのエピソードを知って以来、デビューアルバムである『プリーズ・プリーズ・ミー』の聴き方が変わった。それまではアイドル視されていた時代のポップ・アルバムだと位置づけていたのを、ライヴ感溢れるロックン・ロール・アルバムだと感じるようになったのだ。ちょっと裏話を知ったぐらいで単純だなと思うかもしれないが、実際に俺の中ではそう変わったのだから仕方がない。

そう思うようになった理由はやはり「1日でレコーディングをした」というところに尽きる。「曲はどれぐらいある?」とプロデューサーのジョージ・マーティンに聞かれた彼らはデビュー前に数多くこなしてきたライヴのレパートリーを用意し、当時はまだ2トラックの機材だったから楽器ごとの録音ではなく「せーの」で行っていたのだから、ほとんどスタジオライヴの様相だったに違いない。そしてジョン・レノンは当日酷い風邪をひいていたようで、彼の歌う曲は少し鼻にかかった感じにも聴こえる。

ジョージ・マーティンはビートルズがデビュー前にライヴを行っていたキャヴァーン・クラブでの熱気をアルバムに再現しようとしたらしい。そのためにレコーディングは1日しかないと言って、彼らのテンションを高めて臨んだのではないかなとか思ってしまう。実際にアルバムはライヴ感に満ちているし、オーバーダブもほとんど無いから「素」の彼らを感じることができる。まだアイドル視される前の彼らの、ライヴ・バンドとして積み上げてきたキャリアの集大成でもあると思っている。(h)

※この「ライヴ感」はモノラル盤のCDじゃないと感じられない、2009年にリマスターされた際にはステレオ盤となってしまっているのが残念。

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